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サーモン養殖のマメ知識
世界の
サーモン養殖事情
世界の
サーモン養殖事情
アトランティックサーモンの世界総生産量(2021年。以下同。)は約290万㌧、サーモントラウトは約30万㌧弱です。いずれも、ノルウェーとチリが一大生産地になっていて、全体の7~8割はこの2カ国で生産されています。養殖に適した静穏なフィヨルド海域やサーモンの育成に適した海水温といった環境条件に加え、高品質の魚粉・魚油が確保できるといった飼料原料にも恵まれていることがその背景にあります。
日本の
サーモン養殖事情
日本では各地でサーモン養殖がおこなわれています。ご当地サーモンとしてブランド化しているケースも数多く見られます。
ただ比較的小規模での養殖が多いため、全体量としての養殖量はノルウェー・チリには遠く及びません。日本における生食用サーモンの市場規模は約10万㌧と言われていますが、そのほとんどは輸入で賄われています。
サーモン養殖に適している場所とは?
-
海水温度20度以下
の期間が長い -
潮通しが良い
-
海洋環境が比較的
荒れない -
十分な水深がある
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流氷がこない
サーモン養殖を行うにはこれらの条件が必要です。
この条件を踏まえると、国内で海面養殖を適切に行えるのは秋田・岩手・宮城以北、北海道の襟裳岬以南に限定され、オカムラ食品工業が本社を構える青森県は養殖適地と言えます。

海で養殖できる期間は?
サーモンは水温が20℃を超えると生息できません。そのため、海面生簀で養殖できるのは年末から初夏までとなります。この限られた期間でいかに大きくするかで生産量が左右されます。

サーモン養殖のハードル
淡水養殖には水利権が必要
サーモンは孵化から500g~800gの稚魚までは淡水で養殖します。淡水での養殖では河川を利用する方法が主流です。淡水養殖に利用する河川は、河川ならどこでも良いというわけではありません。一定の水量があること、上流で農業排水が行われていないこと、魚の病気が発生していないこと、などを兼ね備えた河川でなくてはなりません。
養殖に適した河川があったとしても、それを利用するにあたっては河川管理者の許可を受ける必要があります。この権利が水利権です。

水利権の取得は簡単ではない
河川は、1級河川、2級河川、準用河川、普通河川に等級が分けられています。
1,2級河川に関しては国、県が管理しており、新たな水利権の付与は極めて難易度が高いという状況にあります。準用河川と普通河川に関しては市町村に管理が任されているため、市町村の理解と河川周辺住民の理解がないと取得することはできません。
このように、淡水養殖の適地が限られていて、しかも権利取得の難易度が高いという点が日本のサーモン養殖における大きな特徴となっています。
海面養殖では区画漁業権が必要
淡水養殖を経て海面養殖となります。海面養殖では海を使用することになりますが、そのためには免許(区画漁業権)が必要になります。
区画漁業権は法人単独で免許を取得する形か、地元漁協の組合員として漁協が取得した区画漁業権を利用させてもらう形があります。
いずれにしても、地元漁協や地域住民の理解をいただいて進めることが必要であり、準備期間としても相応の期間を要することになります。

デンマークの
サーモン養殖事情
デンマークは、サーモントラウトにおいては最も歴史が古く、現在は、ノルウェー、チリ、トルコといった国とともに世界有数の養殖量を誇る養殖先進国です。入り組んだ地形ながら静かな海のフィヨルドを有し、これが養殖に向いた地形となっていることが背景にあると言えます。

デンマークの海で養殖できる期間は?
デンマークでは、4月に淡水生簀から海面生簀に魚を移し、10~12月に水揚げします。日本は海水温の上昇を避けて年末から初夏にかけて海面養殖をしていますが、デンマークでは冬場の流氷を避けて4~12月を海面養殖の期間としている点が特徴です。なお、海岸線に沿ってメキシコ湾流の暖水が北極圏の冷たい水域に流れ込むという環境から、ノルウェーでは一年を通じて海面養殖が行われています。

ライセンス取得が必要
デンマークで養殖を行うためには、ライセンスの取得が必要です。例えば、淡水養殖を行う場合の取水量のライセンス、海面養殖を行う場合の飼育生物量(バイオマス)ライセンスや使用給餌量ライセンスなど、いくつものライセンスの取得が必要です。デンマークのみならず養殖先進国では、このライセンスの新規取得の困難性から新規参入が困難になるという状況が発生しています。そのため、すでにデンマーク子会社が有するライセンスは大きなアドバンテージとなっています。
デンマークはFCR(増肉係数)が低い
FCRとは飼料を上手に使って魚を丁寧に生産できたのか?というひとつの指標で、値が低いほど効率よく生産できたことになります(参考:サーモン養殖の勘所)。デンマークは、このFCRが日本と比べてかなり低いことが特徴です。当社グループで言えば、デンマーク子会社のFCRは1.2程なのに対し、日本サーモンファームは努力を重ねてきてもまだ1.5程度です。2割の差があります。勿論、自然環境の違いに起因する部分はありますが、この差は、養殖技術や餌の研究開発でデンマークが日本の先を行っているということを端的に表しています。この差の原因を追究することは、国内の養殖技術向上のヒントに繋がっています。

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